ぶいぶいているろぐ

バーチャルな話題を主に記録していく、バーチャルはてなブロガーのブログです。(※アバターは『カスタムオーダーメイド3D2』によるものです)

MENU

VTuberはAtariの夢を見るか

 VTuberブームは最盛期を迎えつつある。

 今が絶頂という話もあれば、まだまだ伸びるという話もある。いずれにせよ、インターネットのみならず、リアルのイベントや地上波まで勢力を拡大しつつある今は、間違いなく「盛り上がっている」と言えるだろう。

 しかし、拡大する文化には後ろ暗い話もつきものである。とりわけVTuberは、本質的にはナマモノであり、生身の存在につきまとう全ての問題を生まれつき抱えているはずだ。また、アバターや放送機材の品質なども問題にされやすい。

 

 「急速な拡大と問題」と聞くと、どうしても頭から「アタリショック」という言葉が拭えない。もっとも、新しいものが急成長を遂げていく過程で、それは誰かが必ず言及するものである。ソーシャルゲームもかつてそう言われた。

 ましてや、ゲームソフトという確固たる商品パッケージと、VTuberというキャラクタービジネスとタレント業の混交では、安易な比較は困難である。その実態は歌い手や生主の方が近いだろう。

 ただし、「タレント業でありながらキャラクタービジネスでもある」という点は、個人的にはクセモノであると考えている。そして、この点が悪い形で表出した事例がすでにある。バーチャライズである。

 

技術と倫理観の欠如した運営企業

www.virtual-tuber.com

 月ノ美兎の登場*1で2DアバターVTuberが一気に加熱している中、バーチャライズは2/26に「世界初のバーチャルYouTuber専門プラットフォーム」という喧伝とともに事業を開始した。最終的に6人のVTuberを確保し、さらに「ヴィー」というマスコットキャラをプロジェクト全体の管理人のようなポジションに据えて活動を開始した。

 しかし、その活動内容はかなりずさんで、特にアバターは静止画1枚のみ」というのは、企業側の手抜きとしか思えない様相である。マスコットの「ヴィー」についても、飲み屋で「バーチャルQBウケるんじゃねw」というノリで作られたような、うまくもない煽り立てるような文言と半端なロールプレイが失笑を誘う出来である。

 表情追従するLive2D仕様の2Dアバターは、一般的に3Dアバターよりも遥かに作成難易度は低い。個人であっても、人によっては48時間で完成にこぎつけられる。

barzam154.hatenablog.com

 「バーチャルYouTuber専門プラットフォーム」を名乗りながら、個人ですら習得できる技術を実装できない点は、「怠慢」と断言してよいだろう。

 そして、7/4ごろ、所属ライバーがチャネル閉鎖、または動画削除を実施。一部は全ツイ消しを行った。グループまとめての予告なしの活動停止、とも言える事態である。

 うち一人は直前にこのようなツイートを残しており、痛切な思いが見て取れる。

 

f:id:kadura-asada:20180708145912p:plain

(2018/7/4 「光(こう)/@koh_vtuber)」のツイート 12:32:21撮影)

 

 本件についてバーチャライズ側から公式の声明は発表されておらず、当のヴィーに至っては半端なQBリスペクトなツイートを投げ込み、反感を買っている始末である。さらに、ツイート全削除したうちの一人・美々奈は、中身(=演者)を入れ替えて再始動 新人のように再始動。これについても特に声明は発表されておらず、直前のツイートだけ切り取れば「また新しいVTuberがデビューしたのか」とも見えてしまうような状況である。

【2018/7/9 追記】

「美々奈は中身を入れ替えてはいなかった」という指摘を受けましたので訂正いたします。しかし、これはこれで「中身が変わってないのに新人のように振る舞う」という構図になってしまうという……

 

 一連の流れは、しかしながら「キャラクタービジネス」としては「利益が上がらないので事業撤退」であり、ビジネスとしてはごく普通の動きである。「演者の変更」それ自体も、声優業界を鑑みればあり得る行動である。

 しかし、「タレント業」として見た場合、企業側の準備不足をタレント側の責任に押し付け、最終的に解雇するという、悪徳芸能事務所としか言えないありさまである。

 QBリスペクトなムーブも、個人活動なら「賛否両論のスタイル」でとどまるかもしれないが、一企業の活動として見た場合、根本的な倫理観の欠如を疑わざるを得ないだろう。代表を務める人物とのDMのやりとりを公開した人物もいるが、「人気のないキャラクターは活動できなくなるという設定*2に従ったまで」と、自社側の責任を棚に上げるような倫理観が見て取れた*3

 このように、すでにVTuber業界には、運営態度および技術面の双方に問題のある「企業勢」が参加を始めている。Atari VCSサードパーティとして、例えば朝食シリアルメーカーのクエーカーオーツカンパニーが参入し、粗悪なゲームを市場に撒いたような事象は、すでに現実のものになっている。

 バーチャライズのような企業が今後も増え続けていったとき、VTuber業界への信頼はどうなってしまうのだろうか。

 

果たしてVTuberはねずみ算か

 バーチャライズの一件は、技術的な問題運営態度の問題がある。これは企業勢には避けて通れない問題である。

 そしてもう一つ、おそらく今後問題になるであろうことがある。「所属VTuberの人数とマネジメント」だ。

 企業系VTuberの新規参入は急増しており、プレスリリースは日夜飛んでくる状態だ。しかし、一度に公表する人数が極端に多いケースが散見されるようになってきた。その極例が、株式会社ZIGによる「VTuber100人プロジェクト」こと、「流星群プロジェクト」である。

 プレスリリース発表時はそのインパクトに釘付けになったが、しかし冷静になってみると一つの疑念が浮かぶ。「100人ものタレントをどうやって管理するのか?」と。

 思いつく限りの(最も消極的な)解決策といえば、「各人におまかせする」だろう。これは憶測でしかないが、生配信主体のVTuberの多くは(配信内容の事前調整こそするだろうが)配信スケジュールも、配信外の活動(主にTwitterだけども)も、ほぼ個人の自主性に任されているような動きをしている。

 この方式において最も恐れる事態は「人気が出なければ放置し、切り捨てる」であろう。6/30に、にじさんじの男性グループ「にじさんじVOIZ」のメンバー4人のうち2人が脱退することが発表されたが、VOIZへはにじさんじ公式からはほとんど支援がなかった、というような状況だったという噂もある。VOIZ公式アカウントも、7/8現在で25ツイートと、あまり動いている様子がなく、ちゃんとマネージャーがいるのか心配になるレベルである。

 にじさんじ自体、SEEDsも含めれば相当な大所帯*4へと発展しているが、まだ50人にも達していない。それでもこのような問題が起きているし、ちょくちょくライバーが炎上する事態も発声している。いわんや100人ともなればどうなるか。

townwork.net

 いちおう、株式会社ZIGではこのような求人も出ている。採用は10名ほど、担当は4人程度としているが、今後も増やすとして100人の面倒を見切れるのか……あまりネガティブな見方はしたくないが、「100人中5人でもあたればいいか」という思惑で動いているような気がしないでもない。

 また、「流星群プロジェクト」については、まだ企画本体の広報アカウトが存在しないことも気がかりだ。第1号さんが先日初配信を実施した現在でも、「流星群プロジェクト」でヒットするのは、デビュー予定と思われるアカウントの先取りのみである。

 

f:id:kadura-asada:20180708164504p:plain

(2018/7/8 「流星群プロジェクト」にてTwitterユーザ検索)

 

 新規スタートアップ企業が、話題性確保のために多産を敢行した場合、よほど計画していなければ多死が待つのみであろう。

 また、大手についても、先日ENTUMがコンテスト応募のアバター46体全てにデビューを検討しているという話もあった。

www.pixiv.net

 ミライアカリの支援をもってしても、果たして全員が生を全うできるのか。ENTUMは他にも、以下のような告知をつい先日行っており、より配信者おまかせのスタンスへと移行しつつあるように見える。上記46人デビュー時のリスクヘッジ……ではないと思いたい。

 

Atariの夢を見るか

 VTuber最盛期を迎える今、確実に「多産」の傾向が生まれつつある。

 そして、要求ラインの高い企業勢においては、運営側の技術力とモラルが問題視される事態も、残念ながら起こりつつある。

 この2点を直結させた場合、「粗製乱造」――アタリショックの主因を(極めて大雑把に)表現するフレーズが生まれる。今現在は、「VTuberであること」そのものに一定の価値が生まれる状況なので、とりわけ大きな問題にはなっていない。「5000人デビューしたうちの1人でも気に入れば良し」というのが、視聴者側の素直な感情ではないだろうか。

 最も危惧すべきなのは、文化として円熟期を迎えた場合に、今以上に「粗製乱造」が問題視されてVTuber界隈そのものが注目されなくなり、別の新興文化にメインストリームの座を奪われる事態、だろう。

 その時、これだけ生まれたVTuberはどうなるのか。個人勢は続けるかもしれないし、ひっそりと「おしまい」にするかもしれない。だが、そのような事態を受けて企業勢が事業撤退した場合、雇われた演者たちはどうなるのか。「グループ所属100人全員路頭に迷いました」では、配信のネタにするにも厳しいだろう。

 幸い、VTuber界隈はインターネットに強く根ざしており、「なにかあったらお互いに助ける」という空気感が比較的強い。先に挙げたバーチャライズについても、手を差し伸べる人が現れたようである*5

 

 多産によって界隈全体の促進をはかるというあり方は、あるいはAtariが夢見た世界のようにも見える。

 願わくば、「VTuberの墓場」が都市伝説すら生まれずに、社会へ普遍的に広まっていってほしいものである。

*1:2/8、Mirrativにて初配信

*2:実際にそういうキャラクター設定が公式サイト上に存在する。

*3:一連のツイートは「バーチャライズファミリー」でツイート検索すれば、「話題のツイート」に出現する。(2018年7月8日時点)

*4:あにまーれを除けば38人

*5:なお、このツイートに、バーチャライズの代表がシレッとリプライを飛ばして仲介を図っている。そういう倫理観なのだろうが、なるたけポジティブな方面に捉えたいものである。